人々の悲しみを喰らう化物…
みんな私をそう呼ぶのです。
人々の悲しみを喰らう化物…
みんな私をそう呼ぶのです。
(No.131 – ラプラス)
アウディ
アウディ
どことなく幸薄そうな女性。住処を持たないが、水辺を好み、河原や海辺を中心に佇んでいる姿をよく目撃されている。
夕方から夜にかけて物悲しい旋律の透き通るような歌声があたりにひびき、周辺に住む人々に安らぎと切なさをもたらす。
◇一人称
私
◇二人称
あなた
◇好き
歌うこと
◇嫌い
人が悲しむこと
◇特技
とても長く泳げる
その昔。アウディがいつものように歌声を響かせていると、その歌声に導かれるように、一人の少女が近づいてきた。
少女は身体が弱く、遠くには出かけられない。河原の近くの家でほとんど寝たきりで過ごしていたところ、歌声が聴こえてきた。その歌声を数少ない楽しみとして日々を過ごしており、今日は思いきって歌声の源を尋ねてきたという。
あてもなく彷徨いひとりぼっちで歌い続けてきたアウディにとって、少女は初めてのかけがえのない宝物だった。少女にとってもそれは同じで、一日の大半を寝たまま過ごさなければならない少女にとってアウディは唯一の「外の世界」の友人であり、その歌は唯一の楽しみであった。
いつもなら長くとも一ヶ月程度でその場を離れていたアウディだったが、このときばかりは一年以上もここに滞在していた。しかし、日々衰弱していく少女の姿を見て、アウディはある日意を決して打ち明けることにした――
アウディは少女に、声を絞り出すように伝えた。
「私、妖精なの。あなた達人間の悲しみを食べて生きているの。
あなたは元々身体が弱かったけれどその回復を妨げていたのは私。
あなたの身体が弱いままでいてくれたら、あなたも周りの人も悲しい気持ちになる。私はそれを食べて生きているの。
でも私、あなたのことが大好き。
私の歌にここまで近づいてきてくれたのも私とこんなに仲良くなってくれたのもあなたが初めてだった。
私も悲しみを食べないと生きていけないけれど、あなたには元気になってほしい。ずっと同じ人達ばかりを悲しい目に遭わせ続けるわけにいかないから…
…今日でお別れしましょう」
翌朝、アウディは身体に異変を感じた。
もう何も食べなくても生きていける。もう誰も悲しませなくても良い。
直感的にそう思えるほどの強い力がアウディの身体を駆け巡った。
傍らにあったのは、少女の亡骸。
自らの身体を水の中へ捧げたのだろう。
少女は「アウディと死別する」という、少女にとって最大の悲しみを感じることによって、アウディに生涯困らないくらいのエネルギーを捧げることができたのだった。
満たされた身体と空っぽの心と共に、アウディはあてのない新たな旅に出た。
名前の由来について。
ラテン語で「聞く」。Audio(オーディオ)などの語源となっている単語。自動車メーカーのアウディも同様の単語を由来としている。 モチーフに取り入れたバンシーが「聞く」ことと密接に関係していることから。ラテン語を選んだ理由は単純に語感が良いから。
ガラノレのモデル(イギリスとその周辺)にちなんで、原型の要素に加え、アイルランドを中心に伝わる妖精「バンシー」の要素を盛り込んでいます。 伝承には地域差がありますが、中でも「その悲痛な叫びを聞いた家の者がもうすぐ死ぬ」「川原や浅瀬に現れる」といった要素を拝借しています。
モデルとなったバンシーが叫び声をあげるのに対して、彼女が歌声で人を惹きつけるのは「うたかたのアリア」が特技であるため。 アリアが「独唱曲」っていうのも彼女の孤独感を引き立てるポイント。


